VOCUS、高度なリバースエンジニアリングと3Dプリント技術により航空機排気部品の認証を取得

VOCUS GmbH | 事例研究

10x

より長い耐用年数

元の溶接部品より長い耐用年数を実現、
従来比の10倍(推定)

55時間

完了した認定試験の時間

(20時間の地上待機+35時間の飛行)の試験に合格

6つの部品

部品と同時に試験片も造形

全工程の再現性を確保するため、6個の部品と同時に試験片も造形

航空宇宙部品の製造において、重要部品の供給が不安定であったり、品質にばらつきが生じたりすると、運用体制や安全性に深刻な影響を及ぼしかねません。ドイツ・アウクスブルクに拠点を置くVOCUS GmbHは、リバースエンジニアリングと積層造形(AM)を専門とする革新的な航空宇宙サプライヤーです。同社は航空機排気システム用スライド部品の再設計および認証取得という極めて重要なプロジェクトを任された。

完全に認証可能かつ再現性の高い積層造形ワークフローを構築するため、VOCUS社はMaterialise社と緊密に連携しました。両社は設計データの準備や造形戦略の策定から、生産履歴のトレーサビリティ確保に至るまで、シームレスなデジタルプロセスチェーンを確立し、航空宇宙分野における認証取得の基盤を築きました。金属部品の製造はEOSの産業用金属3Dプリンターで実施され、航空宇宙用途に求められる再現性とプロセス安定性を確保しています。

従来、航空機グレードの鋼材を溶接して製造されていた該当部品は、寸法のばらつきや溶接による応力集中、手作業による溶接がもたらす作業効率の低下、さらに耐用年数の制限といった課題を抱えていました。そこで明確に掲げられた目標は、予測可能でデジタル制御された、かつ認証取得が可能な製造プロセスを確立することでした。性能向上を実現しつつ、EASA(欧州航空安全機関)の厳格な補足型式証明(STC)要件を満たすことが求められました。

課題

従来部品の手動溶接工程には、構造面・運用面の両方で複数の問題がありました
  • 溶接に起因する変形や熱影響部、寸法ばらつきにより、製品の一貫性及び再現性が低下していました
  • 溶接部の応力集中が、部品寿命の短縮と部品交換回数の増加を招いていました
  • 手作業工程や専用治具、限定的なトレーサビリティが運用上の非効率性を招いていました
  • 従来の品質保証では、航空宇宙認証に必要なデジタル透明性が不足していました 

認証と運用の要件を満たすには、デジタルデータに基づく高い再現性、耐久性を高めた設計、そして全工程のトレーサビィティが不可欠であり、従来工法では対応が困難でした 

VOCUS、航空機排気部品のAM(積層造形)を認証

ソリューション

VOCUSは、CTベースのリバースエンジニアリング、デジタル最適化、積層造形(AM)による製造プロセス、厳格な試験、そして航空宇宙分野における完全な認証取得を組み合わせた多段階のアプローチを採用しました。

このアプローチの実施にあたり、Materialise社は航空宇宙分野で実績のあるソフトウェア環境を通じてVOCUSを支援しました。両社の連携により、信頼性の高い造形準備、標準化されたデータ管理、そしてエンドツーエンドの文書化が確立され、認証要件を満たすために不可欠な基盤が整えられました。

  1. CTスキャンによるリバースエンジニアリング: 高解像度の産業用コンピュータ断層撮影(CT)を用いて、内部・外部の形状を高精度に取得し、再設計のための正確なデジタル基盤を確立しました。

  2. CADによる再構築と最適化: CTデータを基に、エンジニアはCATIA上で形状を再構築し、AM技術だからこそ可能な改良を実施しました。具体的には下記の通りです。
    - 応力集中部の低減と溶接に起因する接合部の排除
    - 荷重半径の最適化
    - 高付加部分の補強
    - 重要度の低い部分の選択的な軽量化
    - 繰り返される熱的・機械的負荷に耐える、溶接不要な均質な構造

  3. 樹脂AMによる試作検証: 金属造形に進む前に、樹脂3Dプリンターで試作品を造形し、寸法精度および適合性を確認しました。これによりCADデータの忠実性を確保した。

  4. EOS NickelAlloy IN718 を用いた金属積層造形: 最終モデルはMaterialise Magicsを用いた造形準備およびEOS Buildによるシステム統合のもと、EOSの金属3Dプリンターで造形されました。EOSプラットフォームの高い安定性と再現性は、メルトプール挙動の一貫性が確保され、信頼性の高い造形結果が得られました。1回の造形につき6個の部品を製造し、継続的な品質確認のために試験片も同時に造形されました。

  5. 後処理および品質管理:後処理工程には、応力除去熱処理、サポート除去、精密機械加工、セラミックビーズブラストが含まれます。さらにVOCUSは、部品ごとのロット番号とシリアル番号を付与する独自の識別システムを導入し、製品ライフサイクル全体にわたる完全なトレーサビリティを確保しました。Materialiseと連携し、Streamicsを基盤とした効率的なデジタルトレーサビリティ体制を構築しました。この中核データ基盤は、装置パラメータ、材料情報、後処理記録、検査結果が一元的に管理され、航空宇宙分野の認証取得に対応可能な統合ドキュメント体制が実現されています。

  6. 地上試験および飛行試験:EASAは10時間の地上試験を義務付けていましたが、VOCUSはBinder MotorenbauおよびSOLO Aero Enginesにおいて合計20時間の試験を実施しました。試験では、コールドスタート、エンジン始動、5分間の全負荷運転、3分間のアイドリングおよび冷却という負荷サイクルを繰り返しました。飛行試験はDreamWings社のArcus機で実施され、35時間の飛行を無事故で完了しました。現在、AMスライド部品はドイツ、スイス、オーストラリアで実運用されています。

  7. 認証と量産生産: リバースエンジニアリング、積層造形、後処理、品質保証(QA)に至るまで、製造および文書管理の全工程がEASAの型式証明(STC)の一部として承認されました。現時点の知見では、VOCUSはインコネル製のAM金属部品についてEASAのSTCを取得し、実際の運航機向けに製造・供給する認可を受けている企業の一つです。 

ドイツ国内での一貫生産体制

EASA認証取得に向けた体制を確立

認証取得の重要な要因の一つは、リバースエンジニアリングやデータ準備から製造、後処理、文書管理、品質保証に至るまで、積層造形(AM)のワークフロー全体をドイツ国内で一貫して実行できたことでした。この一貫した「Made in Germany」のプロセスチェーンにより、EASAの適合要件を満たすために必要な透明性、プロセス管理、そして十分な文書化体制が確保されました。

ステップ1:CTスキャンによるリバースエンジニアリング ステップ2:CADによる再構築と最適化

結果

このプロジェクトを通じて、VOCUSはEASAの補足型式証明(STC)のもとで承認された、EN 9100/ISO 9001準拠の認証済み製造プロセスを確立しました。主な成果は以下の通りです:

  • 寸法精度と再現性が大幅に改善
  • 溶接不要な均質構造で、繰り返し荷重に対して高い耐久性を実現
  • 予測可能でデジタル制御された製造プロセスを確立
  • 手作業による溶接工程や専用治具への依存を低減
  • 耐用年数を大幅に延長(従来の溶接品と比較して約10倍と推定)
  • 設計から廃棄までの完全なトレーサビリティを確保し、不正品や偽造品の防止を実現

AM(積層造形)とデジタルワークフローの組み合わせることで、VOCUSは従来工法による部品よりも安全性、耐久性、そして認証適合性に優れた部品を実現しました。EOSプラットフォームの高い堅牢性は、プロセスの再現性向上に寄与し、安定かつ予測可能な造形条件のもとで認証取得を支えました。

 

「小規模な企業であっても、積層造形のような最先端の製造技術を導入することは可能です。自社で投資を行う場合でも、適切なパートナーと協力する場合でも実現できます。特に拡張性のあるデジタル基盤を提供する経験豊富な技術パートナーの支援があれば、その可能性はさらに広がります。」

ステファン・ゴルケナント、プロジェクトマネージャー、VOCUS GmbH

運航機に活用中

実用化された革新的排気部品
従来の溶接部品(左)には硫黄堆積物が確認されます、新品のAMインコネル部品(中央)と飛行試験済みAMインコネル部品(右)は、どちらも硫黄堆積物が認められません
認証済みAMスライド部品の非作動状態の図

主要技術データ

本プロジェクトの技術的な全体像をより明確に示すため、認証取得済み製造プロセスの主要な技術素を以下にまとめます
  • 材質: EOS NickelAlloy IN718、高温排気環境下での構造強度を考慮して選定
  • 造形プラットフォームの生産能力: 1回の造形につき6個の部品を製造し、材料品質の安定性を確認のため試験片を同時に製造
  • 後処理:応力除去熱処理、精密機械加工、セラミックビーズブラスト処理により最終公差と表面仕上げを達成
  • ソフトウェア:造形準備にはMaterialise Magics、システム統合にはEOS Build 、デジタルトレーサビリティ管理にはのStreamicsを使用
  • 認証:ISO 9001、EN 9100、およびEASA STCを取得し、航空宇宙製造基準への完全な準拠を確認
排気システム内のスライド部品の位置(赤で強調表示)

より広範な影響

本プロジェクトの成功は、航空宇宙製造における大きな変化を示しています。積層造形技術はもはや潤沢な研究開発予算を持つ大手企業だけの占有領域ではありません。VOCUSのような企業は、適切なエンジニアリング力、デジタルワークフローの統合、そして徹底した品質管理を組み合わせることで、中小企業でも航空宇宙グレードの成果を達成できることを実証しました。
Materialise とのコラボレーションと産業用EOSシステムの活用により、VOCUS はデジタル主導のプロセスチェーンを構築しました。その結果、認証対応可能な積層造形を中小企業でも実現できることが明らかになりました。

利用可能なAM技術と業界標準の認証プロセスを活用することで、VOCUSは重要な排気部品の供給にとどまらず、中小企業が最高水準の製造品質で競争できることを示しました。このアプローチにより、地域のサプライヤーは既存部品の近代化や航空機の耐用年数延長を可能にするとともに、サプライチェーンの強靭化を実現できます。同時に、コスト効率と設計の柔軟性も維持されます。

最終的に、本スライド部品プロジェクトは、先進的なエンジニアリングツールと積層造形へのアクセスが広がることで、航空宇宙分野全体に新たなイノベーションの可能性が開かれることを示す好例となりました。航空機製造における卓越性は企業規模ではなく、ビジョン、技術力、そして継続的な改善への取り組みによって決まることを実証しています。

 

VOCUSが航空認証を取得した量産体制を実現したことは、体系化されたデジタルワークフローがいかに有効であるかを示しています。エンジニアリングの専門性とソフトウェア主導の品質保証を組み合わせることで、認証取得は十分に実現可能であることを私たちは実証しました。

ティム・ドマガラ、研究開発エンジニア、マテリアライズ

会社概要

VOCUS GmbH

VOCUSは、積層造形(AM)技術における開発・製造パートナーとして、部品の最適化や製造から試験・評価、さらにはEASA認証プロセス(例:STCプロジェクト)への対応まで、一貫してお客様を支援しています。航空宇宙および産業分野において、AM技術の安全かつ効率的、そして規制に適合した形で活用することに重点を置いています。

詳細はこちら:https://vocus3.de/en/

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