積層造形が実現する石油・ガス分野向けバルブの革新

1週間

リードタイム

リードタイムを52週間以上から1週間に短縮

30 %

トータルコスト削減

トータルコストを30%以上削減

15 %

軽量化

最適化された部品設計により15%軽量化

石油・ガス産業は、高い耐久性と信頼性を備えた重要なインフラが不可欠です。この分野で使用される部品は、強い腐食環境や極めて高い圧力に耐える性能が求められますが、従来の製造方法では対応が難しい場合も少なくありません。世界有数のバルブサービスプロバイダーはこの課題に着目し、自社の製造体制を変革する機会と捉えました。EOSのコンサルタント部門「Additive Minds」と連携し、重要バルブ部品の設計・製造を抜本的に見直すプロジェクトを開始。樹脂積層造形(AM)の力を活用することで、より高い耐久性とコスト効率、そして柔軟性を備えたソリューションの実現を目指しました。

EOSとの連携の目的は、単に部品を置き換えることではなく、スペアパーツの物流、性能、そしてサプライチェーン効率の在り方そのものを刷新することにありました。従来の時間とコストを要する製造プロセスから、シミュレーション主導のオンデマンドデジタルワークフローに移行することで、厳しい技術要件が求められるこの業界における新たな基準の確立を目指しました。

課題

対象となった部品は、随伴水(Produced Water)配管に使用されるチェックバルブでした。この部品は、腐食性の高い海水やその他の化学薬品に常時さらされます。そのため、スーパー二相ステンレス鋼(Super Duplex Steel)のような高価な特殊材料で製造された従来部品であっても、6カ月ごとの交換が必要でした。

こうした交換サイクルは、保守運用に大きな負担となっていました。使用される部品数が非常に多いため、設備停止を防ぐには常に大量の在庫を確保しておく必要がありました。さらに、問題となっていたのが、従来の金属部品の長いリードタイムです。納品までに52週間以上かかることも珍しくありませんでした。

高頻度での部品交換、大量の在庫確保、不安定なサプライチェーンという複数の課題が重なり、莫大なコスト負担を招いていました。

さらに、従来の金属部品形状をそのまま踏襲して製作された初期の樹脂AM部品は、高圧ガス試験中に325psiに達した時点で破裂するという重大な不具合を起こしました。この結果から、単純な置き換えではなく、積層造形に最適化された設計(DfAM)と高度なシミュレーション技術を活用した根本的に新しい設計アプローチが必要であることが明らかになりました。

EOS PA 2200(ナイロン12)をEOS P 396 システムで造形したチェックバルブ(上部)

ソリューション

共同チームは、当初の部品に存在していた根本的な弱点を解決するため、シミュレーション主導による再設計プロセスに着手しました。この取り組みでは、材料特性、高度な設計、厳格な評価試験を含む包括的なアプローチを採用し、総合的な最適化を進めました。

チームは、強度、剛性、優れた耐薬品性をバランス良く備えた材料特性から、EOS PA 2200(ナイロン12)を採用しました。この材料は腐食性の高い環境に適した材料です。チームは高い生産性、信頼性、造形精度で知られるEOS P 396 システムを使用して部品を造形しました。

EOSのコンサルティング部門「Additive Minds」は、トポロジー最適化や有限要素解析(FEA)を活用しながら設計改善を支援しました。応力集中の解析と設計の反復検証を実施。荷重条件、制約条件、境界条件といった要求をすべて満たしつつ、部品体積の削減によって造形性向上、コスト削減、強度向上を同時に実現できる最適解の探索を進めました。その結果、再設計後の最大応力は約58MPaから27.5MPa未満へと大幅に低減されました。

造形後、部品はDyeMansionによる、「Vapor Fuse Smoothing(蒸気平滑化処理)」が施されました。この後処理工程は、部品の完全な防水性を確保し、用途上求められる気密性能を実現するうえで重要な役割を果たしました。設計、シミュレーションから造形、後処理に至るまでのシームレスなワークフローにより、、AMは従来の金属製部品と同等以上の性能を持つ部品を製造できることが実証されました。

EOS PA 2200(ナイロン12)をEOS P 396 システムで造形したチェックバルブ(下部)

結果

この協業は、バリューチェーン全体に大きな変革をもたらしました。特に大きな成果となったのが、リードタイムの劇的な短縮です。元のスーパー二相ステンレス製部品では52週間以上を要していたのに対し、AMで製造された樹脂部品はわずか1週間で製造可能となりました。この大幅な改善により、サプライ・チェーンの効率化が進んだだけでなく、真のデジタル・スペア・パーツ運用も実現。高コストな大量在庫を物理的に保管する必要がなくなりました。

再設計された部品は、高圧環境下で極めて優れた性能を発揮しました。耐圧試験では、シェル試験で最大450psi、シート試験で最大325psiまで、いずれも問題無く合格しています。特に注目すべき成果は、長時間にわたる空気および高圧窒素ガス試験において、「完全機密性能」を達成したことです。これは、初期設計では実現できなかった性能でした。さらに、最大負荷条件で60分間実施された長時間静水圧試験においても、クリープ変形や塑性変形は確認されず、部品の高い信頼性と健全性が実証されました。

グローバル・バルブ・サービス・プロバイダーの主任エンジニアは、今回の成果について次のように高く評価しています。「これらの部品は、すべての圧力試験を問題なく合格しました。結果は予想以上です。」さらに、AM部品の耐久性とシール性能について、次のように述べています。「特に、最後に実施した空気試験および高圧窒素ガス試験では、気泡密閉性能に関して非常に優れた結果が得られました。」

性能の向上に加え、部品重量を15%軽量化し、トータルコストを30%以上削減する成果を達成しました。さらに、部品は、API 598やAPI 6Dといった厳格な業界基準にも適合しています。これらの成果は、AMが石油・ガス業界の重要インフラに対して、従来工法を上回る性能、耐久性、経済性を備えたソリューションを提供できることを示しています。また、これは石油・ガス分野に限らず、幅広い製造業にとっても有効なアプローチであることを実証しています。

EOS PA 2200(ナイロン12)をEOS P 396 システムで積層造形したさまざまなパーツ

「AM部品はすべての圧力試験を問題なく合格し、期待を上回る結果が得られたことを大変嬉しく思います。」
グローバル・バルブ・サービス・プロバイダー、主任エンジニア

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