3Dプリンティングにおけるリサイクルの実態と材料の持続可能性
2026年8月14日 | 読了時間:5分
3Dプリンティングと持続可能性は同義のように語られることが少なくありません。積層造形(AM)には数多くの利点があります。 ニアネットシェイプによる製造は材料廃棄を抑制し、さらにデジタルワークフローによって、必要な時に必要な数量だけ生産できるため、過剰生産を回避できます。重要なのは、リサイクル、再利用、責任ある材料調達を適切に取り入れることで、効率的な3Dプリンティングを、実証可能な材料の持続可能性へと結びつけられるかどうかです。そうでなければ、従来の製造方法と同様の廃棄物問題を繰り返することになりかねません。真に責任ある製造を実現するには、適切な3Dプリンターの選定、材料の選択、そして造形品質のを管理するための適切なプロセスが不可欠です。
3Dプリンティングが必ずしも持続可能とは限らない理由
AMを持続可能性への万能なソリューションと考えるのは適切ではありません。装置を導入するだけで、環境負荷の低減が自動的に実現されるわけではないからです。粉末材料の管理不足、不適切な造形パラメータ、過剰なサポート材の使用は、AMの本来持つ環境面でのメリットを損なう可能性があります。また、適切なリサイクルプロセスが確立されていなければ、材料廃棄やスクラップが増加し、、持続可能な3Dプリンティングという目標そのものが損なわれる恐れがあります。
粉末床溶融結合法(PBF)はその代表的な例です。この技術が「廃棄物の少なさ」という利点を発揮できるのは、未使用粉末を後続の造形に再利用し、さらに軽量構造の採用や効率的な生産によって材料使用量を削減できる場合に限られます。こうした取り組みが行われなければ、未溶融粉末や造形不良品、過剰なサポート材の発生によって、3Dプリンティングに伴う廃棄物は想定以上に増加する可能性があります。
積層造形におけるリサイクルと再利用の違い
再利用は、同じ材料循環プロセスの中で活用し続けることを意味します。例えば、未溶融の粉末はふるいによって、不純物や大きな粒子を除去した後、材料の種類に応じて新しい粉末と混合したら、新しい粉末と混合したり、ホッパーへ補充したりすることで再び造形に使用されます。この方法により、造形材料の品質を維持しながら、複数回にわたって活用することが可能になります。
一方、リサイクルは異なる考え方です。リサイクルとは、廃棄物を新しい材料や製品へと再生するプロセスを指します。例えば、造形不良品やサポート材は粉砕してペレット化し、射出成形用材料として利用したり、他の合金へ再利用したり、新たな粉末原料へ加工したりすることができます。
再利用とリサイクルは、どちら3Dプリンティングにおける廃棄物削減に貢献しますが、必要となる設備投資、品質管理の要求水準、そして規制対応の厳しさには違いがあります。現在のリサイクル法の多くは、未使用の樹脂粉末や造形品、サポート材をペレット化して他の製造プロセスで利用したり、金属廃材を再溶解して再利用したりする方法が主流となっています。
一方で、使用済み樹脂粉末を再びPBFプロセスで活用するための技術開発も進んでいます。例えば、使用済みポリアミド粉末は水蒸気処理による材料特性の改善や、造形品の再粉末化によって再利用することが可能です。ALM HT-23の再粉末化に関する研究プロジェクト(実現可能性調査)では、このようなアプローチの有効性が確認されています。また、金属スクラップから製造される金属粉末は、金属部品の再利用と金属粉末材料の持続可能な調達の両方に貢献します。
材料調達の観点では、EOSのアルミニウム材料 AlSi10Mgは現在、100%リサイクル原料から製造されています。これにより、従来の材料と比較して、原材料調達から出荷までのライフサイクルにおける温室効果ガス排出量(CO2e )を約83%削減しています。 第三者機関による検証では、材料特性が従来品と同等であることが確認されており、お客様は再認証や再評価に伴う追加コストや時間を回避できます。リサイクル原料への移行は、クローズドループリサイクルと持続可能な3Dプリンティングに向けた大きな一歩です。そして、高いリサイクル材含有率を実現している材料はAlSi10Mgだけではありません。
再利用の代表的な例として、工業用水処理部品があります。このプロジェクトでは、最大100%再利用した樹脂粉末を使用して部品を製造しました。使用された材料は、ポリアミド12(PA2200)粉末は、すでに複数回の造形に使用された材料でしたが、3Dプリンティング部品に求められる機械的特性を十分に満たしていました。つまり、一度使用した粉末であっても、その特性を活かして新たな製品の製造に再利用できることを示した事例です。
一方で、樹脂材料の多くは現在もダウンサイクルが主流です。ダウンサイクルとは、元の用途よりも性能や付加価値の低い用途へ再利用することを指します。そのため、エンジニアは環境面だけでなく、コスト、品質、規制要件も考慮しながら、再利用とリサイクルのどちらが適しているかを判断しています。特にさまざまな材料を扱う場合には、高性能な樹脂3Dプリンターと信頼性の高い分析・評価技術を活用することで、最適なバランスを見つけることが重要になります。
AMにおける材料循環のライフサイクル
材料調達
PBFプロセスで製造される部品の環境負荷に最も大きな影響を与えるのは、使用された材料そのものです。そのため、材料由来の環境負荷を低減するためには、まず原材料の調達段階から取り組みことが重要です。
AlSi10Mgのような金属材料の多くは、最大100%のリサイクル率を原料として使用することが可能です。
一方、現在PBFで使用されている樹脂材料には、リサイクル由来の原料は含まれていません。しかし、再生可能エネルギーを活用した製造プロセスや、バイオ由来樹脂、さらに廃食用油を原料とした樹脂を採用することで、原材料に起因する二酸化酸素排出量を削減することができます。
ISO 14040/14044や ISO 14067 に準拠したライフサイクルアセスメント(LCA)や製品カーボンフットプリント(CFP)は、第三者機関による検証を受けることで、原材料調達から製造までの環境影響を定量的に評価できます。これにより、調達部門やコンプライアンス部門が活用できる、監査可能で信頼性の高いカーボンベースラインを構築することが可能になります。また、リサイクル材を含む適切な材料や原材料を選択することは、持続可能な製品設計を実現するための重要な基盤となります。
製造
生産工程における材料使用量や温室効果ガス排出量を削減するためには、粉末材料の無駄できる限り減らすことが重要です。そのため、多くの企業では、未使用粉末を可能な限り再利用できるように、さまざまな取り組みを行っています。
金属:未使用粉末はふるい分けによって再利用できます。2025年にM4 ONYXとともに導入されたRFS Proは、サイクロンセパレーターを用いて排気流から粉末を回収し、ふるい分けによって再利用を可能にします。また、「Smart Fusion」などの機能を活用することで、サポート材の削減し、材料使用量の低減を実現します。
樹脂:樹脂粉末は通常、新しい粉末と使用済み粉末を混合して使用します。一般的には、新しい粉末を50%程度混合するケースが一般的です。リフレッシュ率を最適化した材料では、混合する新しい粉末の割合を減らし、コスト削減と材料使用量の低減を実現できます。前述の工業用水処理部品の事例では、使用済みPA12粉末を最大100%活用しています。この用途では、経年変化した粉末の特性を活かすことで、高い再利用率を実現しています。
投入された材料のすべてが、最終製品として活用されるわけではありません。サポート構造や造形不良品は、3Dプリンティングにおける廃棄物の発生要因となります。サポートを最小限に抑える設計や造形前シミュレーション、リアルタイムのプロセス監視を行うことで、材料ロスの発生を抑制できます。さらに、適切な造形条件の設定や造形不良の監視により、スクラップと材料廃棄を削減できます。また、軽量構造やトポロジー最適化によって、そもそも使用する材料の量を減らすことができるため、環境負荷の低減にもつながります。
材料の再利用サイクル
3Dプリンティングにおける材料の再利用は、製造プロセスの重要な一部です。使用済み材料は再利用やリフレッシュ(新しい材料の充填)、あるいはふるい分けと混合を通じて品質を維持しながら再び造形に使用できます。このような取り組みにより、材料の有効活用と廃棄物の削減を実現できます。
未使用粉末は、ふるい分けを行い、適切なリフレッシュ率での混合を行うことで、再利用可能な材料として活用できます。持続可能性の観点では、材料の混合に伴う環境負荷は、新たに追加される材料に限定されます。例えば、PA 2220HighReuse、 PA 950 HD、 EOS TPU 1301 といった材料は、新品材料を20~30%追加するたけで使用できるように設計されています。そのため、新品材料の使用量を抑えながら、廃棄物の発生も最小限に抑えることができます。先に紹介した工業用水処理部品の事例での追跡分析では、8部品を22時間かけて造形するプロセスにおける二酸化炭素排出量(CO2e)が108kgから16kgへと削減されました。これは約86%の二酸化炭素排出量削減に相当します。また、引張特性および疲労特性は要求仕様を満たしており、性能面への影響はありませんでした。このようなアプローチは、3Dプリンティングにおける廃棄物の削減だけでなく、再利用材料の活用率向上にも貢献します。
ほとんどの用途では、使用済み粉末を100%利用することは現実的ではありません。しかし、新しい材料やリフレッシュ率を最適化した材料の開発により、新しい粉末の追加量を最小限に抑えることが可能になっています。これにより、実際に部品として使用された分に相当する量だけ新品粉末を補充すれば良いケースもあります。
金属粉末についても同様の考え方で運用されています。造形後に残った未使用の金属粉末は、ふるい分けを行ったうえで次回の造形に再利用されます。最新世代の粉末循環・ろ過システムであるRFS Proは、サイクロン分離器を用いて造形チャンバーから排出された粉末を分離し、これらも再利用可能です。さらに、また、EOSでは使用済み粉末の評価や再認証や再認定サービスを提供しています。
リサイクルの流れ
再利用の限界に達した材料は、リサイクルされる場合があります。ただし、樹脂材料と金属材料では、材料が受ける変化が大きく異なるため、リサイクル方法も大きく異なります。現在PBFで使用されている樹脂材料については、スクラップ材や使用済み粉末から新たな粉末を製造する「機械的リサイクル」は、現時点では実用化されていません。その主な理由は、PBF用樹脂粉末には非常に厳しい材料特性が求められること、そして樹脂が熱による影響で劣化することにあります。そのため、樹脂材料の多くは、ダウンサイクル利用されています。例えば、使用済み粉末や造形品をペレット化し、射出成形材料や押出成形品の材料として利用することが一般的です。これらの用途では、PBFほど厳しい材料特性が求められないため、再利用しやすいという利点があります。
化学的リサイクルは、これとは異なるアプローチです。機械的リサイクルが難しい使用済み樹脂材料を、モノマーやさらに小さな化学成分に分解し、新しい樹脂製品の原料として利用します。このプロセスでは、より多くのエネルギーと触媒を必要としますが、その一方で、新品に近い特性を持つ樹脂材料を再生することができます。
一方、残った金属粉末、サポート構造物、スクラップ材は、スクラップ回収業者によって回収され、従来の金属リサイクルプロセスに投入されます。一般的には、選別、洗浄、再溶解といった工程を経て、新たな材料の原料として再利用されます。金属製造における温室効果ガス排出量の大部分は、鉱石の採掘、精製、溶解炉の運転に起因しています。そのため、金属リサイクルはエネルギー消費と二酸化炭素排出量を大幅に削減する効果があります。 特に再生アルミニウムは繰り返し再溶解が可能であり、多くの場合、新地金(一次アルミニウム)の製造に必要なエネルギーのわずか5%で再生することが可能です。これは、AMを含むあらゆる産業において、金属リサイクルが大きな環境価値を持つことを示しています。
製品寿命終了後(End-of-Life)
粉末や部品をリサイクルや再利用できない場合、それらは通常、埋立処分場や廃棄物焼却施設に送られることになります。一方で適切に管理された部品は、再製造や材料回収の対象となります。例えば、部品の識別情報や材料履歴を記録しておくことで、金属材料は適切なリサイクル工程へ戻され、樹脂材料も認定済のリサイクルプロセスで再資源化できます。このような取り組みは、埋立や焼却を減らし、循環型のものづくりを実現するうえで重要な役割を果たします。
最適化の効果を生み出す要因とは
効果的な材料管理により、AMは単なる革新的な製造技術から、持続可能性を定量的に実現できる製造技術へと進化します。
主な取り組みには以下のようなものがあります。
・造形方向の最適化やニアネットシェイプ設計により、サポート材の削減、加工代の最小化、後加工時間の短縮を実現する。
・使用済み樹脂粉末や金属粉末をふるい分けやリフレッシュ(新しい材料の補充)を通じて再利用する。
・粉末の品質を継続的に監視し、粒度分布や化学組成を仕様範囲内に維持することで、品質を損なうことなく安全に再利用する。
・生産拠点を需要地に近づけることで、輸送に伴う二酸化炭素排出量を削減し、サプライチェーンの強靭化を向上させます。
材料戦略が持続可能性の成果を決定する理由
リサイクルへの取り組みを、実際の成果として実現したいとお考えですか。当社の樹脂AMシステムや、金属AMシステムをご覧ください。また、「BLUEPRINT vlog」でご紹介している実際の活用事例を通じて、持続可能な製造の可能性をご確認いただけます。EOSの専門家にお問い合わください。さらに責任ある製造を推進する材料戦略についてご相談ください。